日本には今まで無かった貴重な書籍 2004-09-23
今までこの本にまとめられている論文などの情報を集めようとすると、本当に大変で、また情報の重複なども多く大変でしたが、こういった媒体の登場でこれからも効率的にこれらの情報に、肥満治療や肥満対策などに興味のある方がアクセスできるようになったことは喜ばしいことだと思います。
アディポサイエンス―脂肪細胞からメタボリックシンドロームまで (Vol.1No.1(2004創刊号))フジメディカル出版 刊
発売日 2004-08
いわゆる飽食と,極度に発達した機械文明,車社会は,我々人類のライフスタイルを大きく変えてしまった.人体の細胞の中でこの変化に対して直接大きな影響を受けたのは脂肪細胞であろう.
最近の肥満症,脂肪細胞の研究の進展はわが国発のアディポサイエンスという研究分野を生んだが,その中でもとくに重要な発見は,脂肪細胞が単なるエネルギーの備蓄細胞ではなく,多彩な生理活性物質(アディポサイトカインという)を分泌する内分泌細胞であるという概念であろう.
免疫を補助する補体,細胞の増殖因子や炎症関連のサイトカイン,血液凝固,線溶系に関連する生理活性物質,オンコジン,昇圧物質などが脂肪細胞から大量に分泌されているという事実がわかったときはかなり驚いた.
これらアディポサイトカインの分泌も,栄養状態に応じて刻々変化する脂肪細胞の状態によって変化しているものと考えている.
21世紀の医学の中でも最も大きな課題の一つと考えられる糖尿病,高脂血症,高血圧,動脈硬化などのいわゆる生活習慣病は飽食と,運動不足を基盤とした肥満,つまり脂肪組織の過剰蓄積が大きく影響することは誰も否定しないであろう.
しかも,脂肪組織の蓄積量が病態を決めるのではなく,内臓脂肪の蓄積に伴う脂肪細胞の機能異常,とくにアディポサイトカインの分泌異常(例えば,TNF-αやPAI-1の過剰分泌や善玉のアディポネクチンの分泌低下など)が,多彩な病態の成因として大きな意味を持つことが明らかになってきた.
しかしここで,脂肪細胞の本来の生理機能である過剰なトリグリセリドを貯めるという現象がなぜ生体に障害をあたえる作用をするのか?という疑問が生じる.
実は,よく考えてみると,我々人類の(少なくとも,先進国と開発途上国の一部)ライフスタイルが今の状態になったのは250万年の進化の歴史においてほんの50年にも満たないのである.
その前の249万9千9百50年間に渉って脂肪細胞は,食べ物が豊富にあればちゃんとトリグリセリドを貯めて肥大し,またそれを使って再び食べ物を獲得することや,出産,授乳のエネルギーとして使うことで生存し,また種族を保存してきたものと考えなければならない.
その間,エネルギーを備蓄し,また放出するだけでなく,栄養状態に応じて多彩なアディポサイトカインを適量分泌することによっても生体防御を行ってきたと考えるのが妥当である.例えば,現在の生活習慣病に対しては悪玉とされるTNF-αは細菌感染に対しては防御的に働き,またPAI-1にしても傷を負ったときは出血を防ぐ作用を発揮し,かっては善玉のアディポサイトカインとして働いてきたのであろう.
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